自律神経

2016.03.03

自律神経とは?

自律神経は、構造的、機能的にみて内部環境と外部環境の間を接続する位置にあり、身体の機能を調和させ、ホメオスタシス(心血管・呼吸調節、体温調節、胃腸運動、尿・便の排泄機能、生殖機能、代謝・内分泌機能)を保ち、ストレスに対する適応的反応(「闘争か逃走か」反応)をおこなう。

このように、自律神経系は種の生存と増殖を確保するために、不橈不屈ともいえる仕事をしている。

1921年にCambridge大学の生理学者であったLangleyは、「自律神経系 Autonomic Nervous System」を出版し、自律神経系を交感神経、副交感神経、腸管神経の3系に分類し、現在の自律神経の概念が確立した。

 

自律神経の交感神経は、副交感神経とともに自律神経系を形成し,分泌腺・血管・内臓などを支配する神経である。精神興奮や運動に際して,唾液を分泌し,血圧・血糖を高め,皮膚・内臓の血管を収縮させて血液を筋肉・脳に集めるなど,おおむね全身の活動力を高める働きをする。

一方、副交感神経は脳部および仙骨部から発し、大部分は迷走神経で、伝達物質としてアセチルコリンを分泌する。心臓に対しては抑制、胃腸に対しては促進の作用をする。胆汁分泌の促進,涙や唾液の分泌促進,瞳孔散大などの作用をもつ。

 

これら自律神経機能は、身体的ストレスのみならず心理的ストレスの影響を受ける。アメリカの代表的な疫学研究であるMultiethnic Study of Atherosclerosis(MESA)において、質問紙票で評価されたうつ症状、怒り、不安、社会的支援の得点と副交感神経機能との関係をみた結果、うつ症状との間に有意な負の関連がみられた。したがって、特にうつ気分が続くことが、自律神経機能、特に副交感神経機能を低下する方向に影響すると言われている。

 

自律神経の評価法

自律神経反応の客観的評価法として、唾液などの生体サンプルに含まれる物質により評価する方法が用いられている。唾液からは,内分泌活動の指標となるコルチゾールや,免疫活動の指標となる sIgA,交感神経活動の指標となるαアミラーゼなどの物質が測定可能であり,これらはいずれも急性,慢性のストレス状態を反映する事が知られている。

また、より手軽に測定する手法としては、心拍変動を用いた自律神経測定が挙げられる。心拍変動解析にはいくつか方法が提案されているが、それらは時間領域解析、周波数領域解析に大きく分けられる。

 

時間領域解析でよく使われる手法は、心拍間隔の標準偏差 (SDNN) を算出することである。その他の時間領域解析としては、連続した心拍間隔の差の二乗平均平方根 (rMSSD)、NN50 (または差が 50ms 以内の連続した心拍間隔の数)、pNN50 (または差が 50ms 以内の連続した心拍間隔の総数の割合) などがある。SDNN やrMSSD は、副交感神経活動との関連が認められている。

一方、周波数領域解析は心拍変動を周波数領域上で解析する手法である。一般的、生体には心拍の揺らぎがあり、この変動をスペクトル解析すると、一定の周波数のところにピークがみられる。人の場合には、呼吸周期の変動を表す高周波成分(0.15Hz~0.40Hz:HF)と血圧変動を反映する低周波成分(0.05Hz~0.15Hz:LF)が現れ、この両者は自律神経活動反映する。HFは副交感神経支配を受けており、LFは交感神経と副交感神経の双方の支配を受けている。通常、検査室で1~5分間の心拍間隔を記録して判定する方法や、ホルター心電図記録を利用して24時間の自律神経活動を評価する方法がある。また、近年では,胸部に貼る超小型・軽量のウェアラブル心拍センサ等が開発され,日常生活において長時間にわたり自律神経活動を測定することが可能となった。

 

自律神経に影響を及ぼす内的・外的要因

自律神経活動は性、年齢、人種、疾患の有無等、内的要因により影響されることが知られている。同じMESA研究において、アメリカの6つの地域に住む45~84歳の一般住民6,652人(白人2,550人、黒人1,843人、ヒスパニック系1,472人、中国人787人)を対象として、自律神経機能に関連する因子を検討した結果、女性よりも男性の方が、そして年齢が高くなるほど副交感神経機能が低い傾向がみられている。また、高血圧、高コレステロール、糖尿病を有する者はそうでない者に比べて心拍数が多く、副交感神経機能が低く、生活習慣病と自律神経機能が関連している傾向がみられた。

このような内的要因による自律神経機能への影響以外にも、気象などの外的要因による自律神経機能への影響もあると言われている。

例えば、天候不順に関連した低気圧下では、除脈、顆粒球減少、リンパ球増多、尿中アドレナリンの減少など、副交感神経活動が高まり、滅入った気分になる。

また、良好な天気に関連した高気圧は、線条体のドパミン放出亢進、末梢カテコラミン分泌亢進、顆粒球増多など、交感神経活動が高まり、心地よい気分になるとの報告もある。

 

 

自律神経を整える方法

内的・外的要因による自律神経の乱れから生じるストレスを軽減する方法として、「呼吸法」が挙げられる。これは、ゆっくり、深く行う腹式呼吸で、ストレスと密接な関係にある自律神経機能を調節しストレスを緩和させる方法で、呼吸器内科や心療内科において呼吸効率の増大、血圧降下、ストレス低下等、その有用性が明らかにされている。また、呼吸法の訓練はストレスに対する適応性を増加させ、ストレス性の疾病や疾患の治療に貢献していることも生理学的、生化学的に実証されている。

また、ウォーキングのような比較的低強度で持続的運動である有酸素運動は、自律神経機能を整え、呼吸、循環器系の改善、免疫力の強化、認知機能の改善等々、健康で病気にかかりにくい体質改善に役立つとして、広く推奨されている。

 

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